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2024.01.22 / エシカルライフ

【ふたつぶの持続可能な暮らし #5】新入り広報、エシカルライフへの道「オーガニックコットン」後編

新入り広報の私(通称:あやぽん)と、喫茶ふたつぶ・店主の香織さんがお送りする対談コラム。このコラム記事では、ふたつぶが大事にしている「地球にも自分にもやさしい暮らし」について考え、香織さんとの対談を通して”やさしい暮らし”を実践する様子をお伝えしていきます。

今回は、前回の続きで「オーガニックコットン」の後編をお届けします!

化学薬品が使われることでの影響

香織さん:大量の化学薬品が使われている現場では、どういうことが起こっているのかをお話していきますね。

農薬などの化学薬品が使われることによって、土壌が持つ本来の力は失われてしまいます。同じ場所でコットンを収穫し続けるには、新たな化学薬品に頼らないといけないそうです。

そうした悪循環が生まれ、土壌だけではなく空気や水を汚し、そこに生きる生物たちも犠牲になります。

化学薬品を扱うのはコットンを栽培している生産者の人たちで、毎年約7,700万人が深刻な健康被害に苦しんでいると言われています。また、農薬や化学肥料の価格高騰による借金を苦に、30分に1人が自殺しているというショッキングな報告もあるそうです。

この現状はコットン栽培だけに限らず、発展途上国のあらゆる生産現場で起こっているというのも、ぜひ知っていただきたいと思います。

チョコレートの原料であるカカオや、コーヒー、バナナ、革製品など。私たちが普段何気なく手にとって消費しているものが、様々な犠牲の上に生み出されています。

あやぽん:数字で出されると重たい気持ちになりますが、目を背けずに消費者の私たちが知るべき現状ですね。事実を受け止めた上で、これからの消費を考えていきたいと思います。

児童労働が深刻な問題になっている

香織さん:目を背けてはいけないけれど、話していると本当に胸が苦しくなってきます。さらに苦しくなりますが、国際労働機関などから報告されている問題についてもお話します。

コットン栽培の生産地での児童労働が、かなり深刻だそうです。児童労働もコットン栽培に限らず起きている問題。カカオやコーヒーなど様々な生産現場で、幼稚園や小学校に通っているような年齢の子供たちが、過酷な労働条件で大人よりも安い低賃金で働いている現状があります。

5歳〜17歳の児童労働者数は1億5,200万人、そのうち7,300万人は危険有害労働をしているというデータがあるそうです。これは、世界の5歳〜17歳の子供のうち10人に1人が、児童労働に従事しているという計算になります。

こんな大事なことを知らずに今まで生きてきたことに、調べながら自分に呆れてしまいました。

あやぽん:それは、私にも言えることだと思います。予想以上の大きな数字で、世界に目を向けると、児童労働の問題が深刻であることがわかりますね。

香織さん:5歳といえば、私の娘の1つ上。リアルに胸にきます。

水道

コットン栽培と密接な水の問題

香織さん:オーガニックコットンと普通のコットンの違いから見えてくるのは、生産背景にある問題だと思います。

コットン栽培と密接な問題としてもう一つ、水の問題があります。普通のコットン栽培には大量の水が必要で、約1キロの綿花を栽培するのに使用される水は、1〜2万リットルだそうです。
※生産地によって多少の差はあります。

人が1日に使用する水の平均が300リットルだと仮定すると、1キロの綿花を栽培するのに約2ヶ月分の水が必要になるそうです。

あやぽん:すごい量ですね。

香織さん:水の問題に関連して、今回調べて初めて知った話。世界第4位の面積を誇っていたアラル海という塩湖が、コットン栽培に使用する水の確保のために年々水が減り、干上がりかけているとのこと。「20世紀最大の環境破壊」とも言われているそうです。

アラル海の面積をわかりやすく説明すると、東北地方全体の面積と同じくらいだそう。かなり広いですよね。

あやぽん:広いですね。日本で一番大きい湖・琵琶湖とは比べものにならないです。

香織さん:東北地方全体の大きさだった湖が10分の1にまで小さくなり、宮城県と同じくらいのサイズになってしまったそうです。大きな湖が干上がっていくということは、周辺に住んでいる人たちにも大変な影響があります。

生態系は破壊され、魚がいなくなってしまい、漁業ができなくなったことで住むことも困難に。数万人規模の環境移民が生まれたと推測されているそうです。

あやぽん:移民という言葉は聞きますが、災害等ではなく環境破壊で移民しなければいけないことにびっくりです。

香織さん:「環境移民」という言葉、私も今回初めて触れました。このような場所は、アラル海の他にもたくさんあると思います。

先進国で消費されるたくさんのコットン製品。原料の生産地では、自然豊かな環境に暮らしていたはずの人たちの生活が脅かされているという。この現状を消費者の私たちは、知らずにいてはいけないと思います。

アラル海は90%が砂漠化してしまったと言われていますが、現在は緑化プロジェクト等の再生計画が進んでいるそうです。ご興味がある方は、ぜひ「アラル海」で検索してみてください。実際の映像とかを見た方が、すごく印象的に残ると思います。

あやぽん:私も「アラル海」で検索してみます!

自分で調べて深掘りすることが大事

香織さん:コットン栽培に関しても、「コットン 栽培問題」といったキーワードで検索すると、いろんな情報に触れることができます。

専門家ではない私は、調べたことをこうして話しているだけなので、どうしても説得力に欠けるところがあると思います。何かのキーワードを自分で深掘りしていく癖をつけることが、ご自身の成長に繋がるのではないかと。

すでに実践されている方も多いと思いますが、私も得意分野でないことだと調べずに、まず横にいる夫に聞いてしまうことも。忙しいタイミングの場合、「自分で調べたら出てくるよ」と軽く言われて、「ケチっ!」と思うのですが(笑)。

こういう時に自分で調べると、人に聞いて教えてもらった情報より知識として残るかなと。

あやぽん:私もつい何か聞いてしまうことがあるなと、思いました。

でも、香織さんから聞いた話をもとに、自分に合ったものは何だろうと調べて、自分で選択ができるようになりました。そうやって身につけていくものかなと思います。

綿花

オーガニックコットンを選択する価値

香織さん:オーガニックコットンで使用される水の量は、普通のコットンに比べて91%も少ないという報告があるそうです。環境問題の観点でも、オーガニックコットンを選択する価値はあると思います。

もっと深掘りしたら、話すことはたくさんあります。遺伝子組み換え種子やセットになる農薬の話など、いろいろ出てきますね。簡単には語れないテーマで、あんまり長くなるとまとまらなくなってくるので、そろそろ終わりにしていこうかな。

あやぽん:軽い気持ちでオーガニックコットンの話をしましたが、奥深い問題ですね。今回の話をきっかけに、これから洋服などを選ぶ時に、改めて背景を考えていきたいです。

香織さん:そんな風に言ってもらえると、嬉しいです。普段手にとるものや口にするものが、どんな素材や背景で生み出されたものなのか。私も含めて現代の人は、あまりにも無頓着に生活しているように思います。

私は娘がお腹にきた頃から、その想いがより強くなって危機感を感じています。健康や環境、生産背景に配慮することを基準に、食事や生活用品、身につけるものも含めて、日々選択するようになりました。

皆さんそれぞれ、胸にささる言葉や心が動く言葉は違うと思いますが、同じように感じる人がいたら。何かを手にとる時に一度立ち止まって、この商品はどんな風に生まれたのだろうと想像する人が少しでも増えたら。今よりほんの少し良い未来に繋がっていくのかなと思っています。

今回初めて、前半と後半に分けてお話する形にしましたが、どうでしょうか。

あやぽん:まさか、長編になるとは思ってませんでした(笑)。

オーガニックコットンというテーマだけでも、裏側には様々なものが存在していることに気づきました。少しずつ意識することから変わっていくものがあると思いますし、そう願っています。

香織さん:ありがとうございます。また次回も日常会話から出てきたキーワードをもとに、お話していきたいと思います。


第6回へ、続く。

編集後記

2回に分けてお届けすることになった、オーガニックコットン編。私の素朴な疑問から始まりましたが、香織さんとのお話を通して、理解を深めることができました。目の前にあるものだけでなく、その裏側にある見えていない部分を想像すること。私たちができる最初の一歩ではないかと思います。

Text:ふたつぶ広報・あやぽん
Photo:喫茶ふたつぶ・香織さん

前編はこちら

第1回「富山から糸島へ移住」
第2回「ミツロウラップをつかってみたら…」
第3回「湯たんぽのすすめ」

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